【第7回】どうなる?新型コロナウィルス感染症のワクチン普及後の日本経済と不動産投資
新型コロナが発生して以来、既に1年以上の歳月が過ぎています。昨年の今頃は世界及び日本は先行きが見通せない大きな不安に襲われていました。現在もコロナの変異株が発生し不安な状況は続いていますが、一時、混沌としていた新型コロナのワクチン確保状況も見通しが立ってきました。
既に医療従事者への先行接種が始まり、高齢者に対しては4月から接種開始の予定となっています。6月までに1億回分のワクチンの確保に目途が立ってきたようです。
今回のコラムでは、ワクチンの接種が進んだ後の日本経済や、不動産業界の動向について述べてみたいと思います。
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歴史は繰り返される?パンデミック後の景気動向は
歴史を紐解いてみると、世界では多くの疫病などが流行してきました。中でも最大級の流行と言えるのが14世紀に発生した「黒死病」とも呼ばれるペストです。英国では人口が約40%も減少したと言われています。
また1918年に大流行した「スペイン風邪(インフルエンザ)」も大きな脅威となりました。
このような難局を乗り越えた後の経済は、どのように動いたのでしょうか。
例えばペストが収束した後の英国では、1人当たりの所得が倍増したというデータもあります。
このようないわゆる有事の際は、政府による大規模な経済復興政策も寄与し、経済が飛躍的に伸びるという事もあった訳です。
米国経済の回復が日本の株価にも大きく影響
ワクチン接種がいち早く始まった米国では、どのような動きとなっているでしょうか。
米国では株価が過去最高値となっています。
これは新型コロナワクチン普及による景気回復への期待や低金利の持続、3月11日に成立した200兆円を超える経済対策の影響だと考えられます。
また、この米国の株価上昇、景気回復期待から日本の株価も大きく上昇しています。2月15日には日経平均株価は3万円を超え、1990年8月以来の3万円台となりました。
米国では金融の引き締めも検討されており、コロナ終息前にもかかわらず景気の回復力が強い傾向にあります。
では日本の状況を見てみましょう。
新型コロナウィルスで緊急事態宣言が発令
新型コロナウィルスやそれに伴う「緊急事態宣言」は日本経済にも大きな影響を与えています。
これまでの経緯を振り返ってみましょう。
緊急事態宣言が最初に発令されたのは、2020年4月7日で、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象となり、4月16日には全国に拡大されました。
その後順次解除され、1都3県と北海道の緊急事態宣言が解除されたのが5月25日となり、2020年の緊急事態宣言は約1ヵ月半となりました。
次に、2021年1月8日から2月7日までの緊急事態宣言が発令されましたが、延長され3月7日までとなりました。さらに1都3県では3月21日まで再延長され約2か月半の期間にもおよびました。
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緊急事態宣言が国内総生産(GDP)に与える影響は
こうした緊急事態宣言は景気にも大きな影響を与えています。
内閣府の発表によると、2020年前半は緊急事態宣言の影響もあり、国内総生産(GDP)はマイナス成長となりましたが、後半はプラスとなり2020年10~12月のGDPは年率に換算した伸びが11.7%増と2期連続の増加となりました。但し2020年の通年ではGDPはマイナス4.8%となっています。
2021年1~3月も緊急事態宣言の影響もありマイナス成長と予測されていますが、その後はプラスとなると予測されています。
今後の動向はワクチン接種拡大の影響が大きい
このように大局的な視点で見ると「緊急事態宣言が明けると景気は上向く傾向にある」事が分かります。ワクチン接種が拡大して、新型コロナの発生が抑えられれば、そのまま東京五輪開催へと続き、経済拡大の可能性があります。
IMF(国際通貨基金)ではワクチン接種による新型コロナの鎮静化を視野にいれて、2021年の日本の経済成長率を3.1%と予測しています。
また政府は2021年度の経済成長率を4%と予測、さらに「2021年度中には経済がコロナ前の水準を回復することが見込まれる(令和3年度(2021年度)政府経済見通しの概要)」と予測しています。
新型コロナウィルス終息後の経済回復はK字回復に?
新型コロナウィルス収束後はどのような景気回復のシナリオをたどるのでしょうか。
米国の例で見ると、景気が下落する時はほぼ一様ですが、上昇する業種は大きく異なるという現象が見られます。つまり回復する業種と落ち込みが拡大する業種の二極化が進んでおり、この現象は「K字回復」と呼ばれています。
今後、日本でも景気が回復していく過程において、発展していく業種とそうでない業種に分かれる可能性もあります。
例えば米国の景気拡大とともに、為替が円安になる事により自動車など輸送業界はとても潤う可能性が高く、またニューノーマルの時代を迎えるにあたり、IT・DX関係などもとても有望視されています。さらに内需の柱である住宅業界も堅調に推移すると思われます。
地価はK字回復で二極化が進むか
2020年の基準地価(2020年7月1日時点)では、東京23区の地価の上昇率は縮小ながらも上昇傾向が持続しています。また都心部以外の区でも2~3%の地価上昇率を保っているエリアが多くなっています。新型コロナウィルス禍においても地価上昇を続けているエリアは、潜在的な土地・不動産の価値も高く、新型コロナウィルス収束後にはさらに上昇する可能性があります。今後は、持続的な金融緩和と、外資系の大手不動産ファンドによる日本への大型投資等の期待感もあり、安定した上昇局面に向かう可能性を帯びています。
事実、経済の先行指標と言われる「企業物価」の上昇、さらに「期待インフレ率」も上昇しており、これらの指標に連動しながら、不動産価格も推移する可能性があります。
しかし、すべての土地・不動産が等しく資産価値が回復する訳ではなく、立地条件によって大きく二極化が進み、不動産価格の回復も「K字回復」となる可能性が高くなっています。
つまり、今後ワンルームマンションを購入する際にも「立地の選定」が改めて重要視されていくと考えられます。
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インフレ時に不動産などの実物資産を持つ人と持たない人の格差が拡大
アフターコロナは緩やかなインフレになる事も予想されます。なぜインフレになるかと言うと、日銀は物価上昇率2%の実現に向けて、持続的な金融緩和政策を行うと示しているからです。
インフレには物価が上昇し、現金の価値が低下します。このためローンを組んでいる場合でも、借りているお金の実質的な価値が下がります。
さらに、インフレ時には優良な不動産などの実物資産を持つと有利と言われます。これは物価の上昇とともに不動産などの資産価値が上昇するからです。優良な不動産を所有していれば、物価の上昇に連動して賃料や不動産の資産価値は上昇し、インフレ対策となります。
逆に不動産などの実物資産を所有していなければ、インフレにより現金などの金融資産は実質的価値が減少します。物価上昇により支出だけが増加していく事態となります。
つまり、不動産などの実物資産を持たない方にはインフレによるメリットは少ないと言えます。
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2021年はワンルームマンション購入のチャンスか?
現在も東京の再開発は進行中であり、東京のポテンシャルがさらに大きく上昇する中で、景気回復や地価上昇局面となればマンションの資産価値も上昇します。
好立地のワンルームマンションは、商業地に建設される事も多く、景気回復に伴い商業地の地価上昇が発生すれば、ワンルームマンションの価格も大きく上昇する可能性があります。つまり今が、ワンルームマンション購入のチャンスと言えるのではないでしょうか。
2021年の東京五輪終了後は日本経済、不動産業界ともに適正な成長軌道に戻る可能性を帯びていますが、立地・資産性・成長性など個別要素を見極める着眼点がより大切になってきます。
著者紹介
野中 清志(のなか きよし)
株式会社オフィス野中 代表取締役 住宅コンサルタント
マンションデベロッパーを経て、2003年に株式会社オフィス野中を設立。
首都圏・関西および全国でマンション購入に関する講演多数。内容は居住用から資産運用向けセミナーなど、年間100本近く講演。
最近の主な著書・連載等
「売れる」「貸せる」マンション購入法 週刊住宅新聞社
「ワンルームマンション投資法」週刊住宅新聞社
「お金」見直し応援隊 日経BPセーフティジャパン(Web) 他多数
テレビ出演等
TOKYO MX TV他「ビジネス最前線 不動産による資産活用の今 」(2016年3月)
BS12〔TwellV(トゥウェルビ)〕「マンション投資 成功へのセオリー」(2014年12月)
「海外投資家も注目する東京の不動産」(2013年11月)
他ACT ON TV 等多数
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