【第1回】2020年の不動産市場を振り返って2021年の市場を展望する

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今回から全6回のシリーズで東京日商エステム様のコラム執筆を担当する事になりました住宅コンサルタントの野中清志です。

1980年代初頭から約40年間不動産市場・マンション市場について分析してきています。

2020年が不動産市場にとってどのような年であったのか、また2021年五輪イヤーはどのような方向に向いていくのかを予想しつつ執筆させて頂きます。

長期的に見ると大きな変動は定期的に現れる

経済においても不動産市場においても5年に1回あるいは10年に1回など、必ずと言っていい程大きな変動があります。
不動産投資は長期の投資ですので、現在だけではなく過去の市場の動きを理解しつつ現在・将来を見据えるという視点が極めて大切です。

このようなコラムを通じて短時間で過去の市場動向をご理解頂ければ幸いです。

1980年代は歴史的な不況期からバブル・バブル崩壊へと続く

1980年代の初頭はマンション業界においても過去に類例を見ない程の「超不況期」と言われる時代でした。東京を中心に全国の主要都市には完成在庫が山積みとなりマンションデベロッパーはとても苦労していました。風向きが変わったのは1985年の「プラザ合意」です。

当時は先進国も含めて不況の時代でしたので、世界の経済のエンジンともいえるアメリカにとりあえず元気になってもらうために日本を含めアメリカ以外の国はドル安を容認しました。ドル安を容認すると言う事は逆に言えば、円高となる訳です。

このドル安円高の影響により、輸出価格による上昇で輸出が減少。国内景気は低迷し自動車産業をはじめとした日本の製造業は大きな打撃を受けました。

そこで日本政府はしばらくの間、内需中心の経済政策に展開しました。その一つが低金利政策を中心とした「金融緩和政策」です。その結果、大幅な低金利により株式市場や不動産市場に大量のマネーが供給され、いわゆる「金余り現象」が発生しました。

そのような余剰資金がマンション業界にも大量に流入し、不動産価格は高騰し一時は新宿の20㎡のワンルームマンションが1億を超えるという場面もありました。

その後、不動産会社に対する融資の規制、いわゆる総量規制が実施され、さらに不動産投資における節税にメスが入るなど、2000年に向けて不動産価格は下降トレンドの局面を迎える事になります。実態を超えて上昇した不動産価格はその後急激に下降トレンドをたどり、多くの金融機関・企業なども大きな負債を抱える「バブル崩壊」が始まりました。

不動産市場は一定のサイクルを繰り返す

バブル崩壊は日本経済に大きな影響を与えました。しかし市場から不良債権が不動産ファンドなどにより一掃されていくと、2003年位からまた再度不動産価格が上昇トレンドとなりました。

そして2008年に発生した「リーマンショック」により、再び金融市場・不動産市場は冷え込む状況となりました。

また2013年の第2次安倍政権発足による経済対策が奏功し、さらに2013年には東京五輪開催が決定し、そのようなアナウンスが世界中のファンドからマネーを呼び込みました。現在渋谷では100年に1回と言われる大規模再開発が進行中ですが、その開発資金にはノルウェーの年金基金が大量流入しています。
このように過去を振り返って見ると、様々な事象が不動産市場に影響を与え、上昇・下降・安定のサイクルを繰り返している事が分かります。

2020年は新型コロナにより大きな影響

アベノミクスによる経済的な復興やインバウンドの増加により、都心部などを中心に不動産市場も活況を呈する状況が続いていました。しかし2020年には「新型コロナ」という未曾有の出来事が発生したのです。

まさに2020年はコロナに始まりコロナで終わったという印象があります。新型コロナは世界経済・日本経済をはじめ私たちの生活に大きな影響を与え、いわゆるニューノーマルという新しいライフスタイルをもたらしました。特に2020年の春先は緊急事態宣言によりこの先がどうなるのかという大きな不安を日本国民全体が感じていました。

しかしながら政府による緊急経済対策、さらに医療従事者様の大変な努力、さらに国民の規律的な行動、外出規制、テレワークの推進などにより新しい局面を迎えました。
このような今回の新型コロナをきっかけに、「人生100年時代」と言われる中で国民の多くが将来不安を払拭するために改めて「資産形成」が見直された年でもありました。

菅新政権が不動産市場に与える影響とは

2020年は日本の政界に大きな変化がありました。9月16日に長く続いた安倍政権が終わりを告げ、菅新政権が発足しました。

安倍政権の時代には大幅な株価上昇・企業収益の増大・インバウンドの増加など様々な分野で大きな貢献があったと考えられます。しかしながら、一方では経済における地域格差、個人においては所得格差などの問題も露呈しています。

では新たに始まった菅新政権では不動産市況にどのような影響を与えるのでしょうか。

一つ言える事はアベノミクス継承の最も大きなキーワードの一つに「大胆な金融緩和政策の継続」が挙げられる事です。
不動産業界にとっては「金融」はとても重要なファクターとなります。但し菅新政権が地方銀行の再編を促すように、不動産業界においてもその資産価値において地域格差が鮮明化する可能性も秘めています。

つまり金融緩和が進んでも、空き家問題など、地方都市の落ち込み、不動産価格の下落などの不良債権が増えれば景気に水を差す事になります。
今後は不動産業界・マンション業界においても不動産融資の選別化がより鮮明になる可能性を秘めています。

2020年には新型コロナにより都区内から郊外・もしくは地方に住宅をもとめる方も増えていますが、不動産の担保価値は何といっても「立地条件」にあります。
つまり都心へのアクセスが良好ではない不動産は金融機関から見た担保価値の下落を意味する訳です。

2020年の首都圏における投資用マンションの市場分析について

2020年はこのように大きな変化がありましたが、逆に投資用ワンルームマンション市場は安定的に推移している事が特長です。

不動産経済研究所の調べによると、2020年1~6月の発売戸数は3,484戸で、通年のデータは未発表ですがこの2倍と換算しても7,000戸台と推測できます。過去10年間の統計を見ても大体5,000戸から7,000戸台で推移しています。

これに対して面積が50㎡以上のファミリータイプのマンション発売戸数は東京都などで大きく減少していますので、投資用ワンルームマンション市場は極めて安定供給の市場と言えます。

ワンルームマンションは極めて利便性の高い商業地などに建設されますので、単身者の増加など需要の増加に対して、土地の供給には限界がある事で供給が限定的になっている事が、安定した状況となっていると考えられます。

新型コロナウィルスが地価に与える影響は?

新型コロナによって地価にも大きな影響が出ました。

国土交通省が年に4回発表している地価LOOKレポート(主要都市の高度利用地地価動向報告)から東京圏の2020年の地価動向を見てみましょう。

2019年末までは地価は上昇傾向にあり、地価LOOKレポートの調査地点である高度利用地の地価はそのほとんどが上昇となっていました。2020年に入ると徐々に新型コロナの影響が出始め、年後半には上昇地点がなくなり、すべての地点で横ばいまたは下落となりました。最新の発表(10月1日時点)では、横ばいが最も多く34地点、次に下落(0%超3%未満)が7地点、その他となっています。

ここで着目したいのは、新型コロナの影響も大きいですが、下落地点がそれほど増加していない点です。リーマンショック時には下落地価が大半を占め、約90%の地点で下落となりました。

この要因として再開発など東京の将来性が高い事、東京五輪による東京への不動産投資が加速している事、そして長いタームで見た場合の新型コロナ収束後の展開など、つまり東京圏の主要地の不動産の価値を見出している投資家が多いという事が言えます。また今回のコロナは一時的な要因であり、収束後は再び地価が上昇軌道に戻る可能性も高いと考えられます。

参考:国土交通省「令和2年第3四半期(R2.7.1~R2.10.1)主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~」を元に作成

新型コロナウィルスの影響を受けやすい不動産の種類は

2020年の新型コロナは不動産業界全体にも大きな影響を与えましたが、ジャンル別に見るとその影響度には温度差がありました。比較的大きな影響を受けたのは飲食店を中心とする店舗不動産、市中ホテル、あまり立地の良くない商業ビルなどです。

堅調だったのは宅配業務などに大きな影響を与える物流系の不動産、さらに住宅系不動産でマンション・戸建共に好調でした。テレワークの浸透により、郊外型ファミリーマンションや戸建は人気があったようですが、投資用ワンルームマンションについては郊外化の動きはそれほど見受けられませんでした。やはりいつの時代でもワンルームマンションに居住する単身者の方には都心へアクセスしやすい立地が好まれている事が改めてわかりました。

年に1度はご自身の資産の総点検を

読者の皆様は年に1回健康診断や人間ドックを受診すると思われますが、それと同様に、ご自身の全資産、たとえば預貯金・保険・不動産などのいわゆる資産、またその時点での負債額、住宅ローン・自動車ローンなど、さらにその時点での年収からどの程度金融機関から資金を借りられる余力があるのかを毎年定点日を決めて検証する事が極めて大切です。

現在大企業においては代表取締役の次のナンバー2は財務畑の方が多いように、家計の財務管理は極めて重要です。不動産会社さんにおいてもそのようなポートフォリオの組み換えなどの相談に乗ってくれる会社もあります。

2021年は大きな転換期となるのか

2021年は新型コロナのワクチン開発及び接種が世界的に進み日本でもその動向が進むという前提ですと、経済全体が急回復する可能性を帯びます。

そのような状況になると現状の段階でも東京の不動産の価値は世界都市ランキングで上位にあるように、香港などの大型投資がますます加速し、東京を中心とした不動産価値はさらに上昇する可能性を秘めています。

金融面からするとスガノミクスの大型金融緩和政策は継続され、融資環境は良好な状態が保たれると考えられます。
但し一部金融機関においては不動産投資用ローンの期間の短縮や若干の金利の上昇も可能性がありますので、現在のようないい条件で不動産投資用ローンを組む事も一つの選択肢となると思われます。

地価につきましては、景気回復とともに商業地を中心とした土地需要は特に外資系企業からの需要も含めて高まる可能性があります。

ファミリーマンションや戸建業界においては郊外化が加速する可能性を帯びていますが、投資系ワンルームマンションは都内、川崎、横浜といった限定的な供給となるでしょう。

このように2021年は概ね良好な投資環境が見込まれます。コロナ渦やそれに付随する将来不安からワンルームマンション投資の潜在的需要はますます増加している可能性もあります。

2021年は東京五輪開催によって日本および東京の世界的な知名度が一気に上昇し、またインバウンドが回復すれば、観光・ホテル業界をはじめ多くの業種で経済的な回復となり、日本経済や地価も急速な上昇に向かうケースも十分考えられます。
つまり2021年は不動産投資市場が大きく変化する可能性の高い年である言えるのではないでしょうか。

著者紹介

野中 清志(のなか きよし)
株式会社オフィス野中 代表取締役 住宅コンサルタント
マンションデベロッパーを経て、2003年に株式会社オフィス野中を設立。
首都圏・関西および全国でマンション購入に関する講演多数。内容は居住用から資産運用向けセミナーなど、年間100本近く講演。

最近の主な著書・連載等

「売れる」「貸せる」マンション購入法 週刊住宅新聞社
「ワンルームマンション投資法」 週刊住宅新聞社
「お金」見直し応援隊 日経BPセーフティジャパン(Web) 他多数

テレビ出演等

TOKYO MX TV他「ビジネス最前線 不動産による資産活用の今 」(2016年3月)
BS12〔TwellV(トゥウェルビ)〕「マンション投資 成功へのセオリー」(2014年12月)
「海外投資家も注目する東京の不動産」(2013年11月)
他ACT ON TV等 多数

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