「自分年金作り」の手段として注目!ファイナンシャルプランナーから見た不動産投資の魅力とは
最近は、老後の年金対策として、会社に勤めながら投資用アパートやマンションを所有するいわゆる、「サラリーマン大家さん」が急増しています。不動産投資は、株式や投資信託などと違い、身近に感じられる投資ではないと思いますが、投資の手法としては、手堅い分野になります。長期にわたり安定した家賃収入が入る優良物件に投資することができれば、将来のお金の不安が和らぐでしょう。今回は、将来の自分年金作りの手段として注目されている不動産投資の魅力についてお話します。
不動産投資の最大の魅力は、安定した家賃収入
人生100年時代を迎える今、将来の自分年金作りの手段として注目が集まっているのが「不動産投資」です。
株式投資やFXは大きく儲かる可能性もありますが、大きく値下がりすることもあり、老後の年金を補う商品として考えるには適切ではありません。一方で不動産投資は、入居者が決まってしまえば、毎月一定の家賃収入が入ってきて、収益が安定します。そして、購入後は管理会社に任せてしまえば、手間もかからない場合がほとんどです。
この毎月決まった家賃収入を得ることができるのが、不動投資の最大の魅力です。多少、景気が悪くなったとしても、入居者がいる限り、安定した家賃収入が入ります。私自身も都内のワンルームマンションにいくつか投資をしていますが、コロナ禍でも入居者が退去することなく安定的に家賃収入を手にすることができました。ただし、どんな物件に投資をしても安定的に家賃収入が入るかといえば、そうではありません。中長期的に安定して家賃収入が入る物件を選ぶことが不動投資で成功する鍵を握っています。
ちなみに、通常、不動産投資をするときには、ローンを組んで物件を購入しますが、住宅ローンと違い、投資用のローンの返済は、みなさんのお給料から負担するのではなく、入居者の家賃収入から返済していきます。つまり、毎月のお給料からローンを返済しなくても毎月ローンは返済され、みなさんの資産が確実に形成されていきます。
不動産投資は、インフレ対策としても有効!
インフレ対策としても不動産投資は有効です。日本銀行では、2013年の当初から物価上昇率が安定的に2%になることを目標に金融政策を実施(※1)しています。現時点では、まだその目標に届いていませんが、物価上昇は、じわりじわりと時間をかけて起こります。
物価の変動を示す指標に「消費者物価指数」があります。これはある時点を基準にして、物価がどう変動したかを表すものです。本稿執筆時点で、2015年を100とすると、2021年6月の消費者物価指数は、101.7(総合)。つまり、2015年時点で1万円だったものが、2021年6月には、1万170円になっているということです。(※2)私たちのお金も資産運用をするなどして、この物価が上がる分以上にお金を増やしていかないと、お金の価値は目減りしてしまうことになります。
仮にインフレになって物価が上昇すれば、不動産の価格や家賃も上がる傾向にあります。中古物件でも価格は上がるのかと気になる方もいると思いますが、不動産の場合は、中古物件でも優良物件であれば、インフレに限らず、購入した時よりも高い値段で売れる可能性があります。
また、不動産投資をする場合、多くの方は、銀行に融資を申し込み、ローンを組んで物件を購入すると思いますが、インフレになると、お金の価値が目減りするので、借入金の価値も目減りします。
例えば、銀行から1,500万円を借り、1,500万円のマンションに投資したとします。インフレが起こり、物価が2倍になった場合、投資したマンションの価格は2倍とまではいかないまでも価格は上がる可能性が高くなります。前述したように、インフレになると、家賃も上がる傾向にあります。
一方借入金の残高は、物価が上がったとしても1,500万円のままです。つまり、インフレになると、借入金の残高自体は変わりませんが、借入金の残高の価値も目減りすることになります。
20年、30年という長期的な視点で見ると、物価は緩やかに上昇する可能性は高いといえます。優良物件に投資することができれば、不動産投資は、インフレ対策としても活用できるといえます。
安定利回りが特徴のワンルーム投資
先ほど、不動産投資は、投資手法の中でも賢い投資だとお話しました。おそらく不動産投資を検討している方の中には、安定した利回りに魅力を感じている方も少なくないのではないでしょうか。
そもそも不動産投資の広告や不動産投資サイトなどに記載されている利回りは「表面利回り」です。
表面利回りは、空室がなく、満室の場合の年間の家賃収入を物件価格で割ることで求めることができます。この時、諸費用は一切考慮しません。計算式にすると、以下になります。
「表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100」
例えば、年間の家賃収入が150万円で物件価格が2,500万円の場合、 150万円÷2,500万円×100=6%となります。
では、本当にこの物件が6%の利回りなのかというとそうではありません。実際には、年間の家賃収入から諸費用を差し引いた金額を物件価格で割ることにより、より現実的な「実質利回り」を求めることができます。計算式は以下です。
実質利回り(%)=(年間家賃収入−諸費用)÷物件価格×100
例えば、年間の家賃収入が150万円で諸費用が40万円、物件価格が2,500万円の場合、110万円÷2,500万円×100=4.4%となります。
ここで気をつけたいのが諸費用の扱いです。基本的に不動産投資は、長期にわたって投資をするので、年によって、修繕費に大きなお金がかかる年もあれば、かからない年もあります。また、物件の年数が経つにつれ管理費、修繕積立金も値上がりしますから、毎年同じ金額がかかるわけではありません。こうした諸費用の変動なども考慮し、長期的にどれくらいの費用がかかるのか見積もっておくことも大切です。
つまり、不動産投資の利回りといっても、表面利回りと実質利回りは違うので、実質利回りに注目するようにしましょう。
参考までに、都内のワンルームマンションの実質利回りの平均は、4%程度です。(※3)預貯金の金利は、みなさんご存知のように超低金利で、タンス預金とほとんど変わらないでしょう。一方、株式投資やFXは、預貯金では到底得られないほど、大きな利益を得ることができるかもしれませんが、失敗した時には、元本割れや最悪のケースでは、投資したお金を失ってしまうかもしれません。その点、不動産投資は、利回りから考えると、つみたてNISAやiDeCoで活用する投資信託積立などと同じ、「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資といえます。
老後資金などのように、安定的にお金を増やしたいとう場合には、投資信託積立や不動産投資のように、ミドルリスク・ミドルリターンの商品を資産全体の中心に据えて運用することを考えていくことが大切です。
不動産投資でも団信に加入できる!
実は意外と知られていませんが、不動産投資でローンを組む際にも「団信」に加入することができます。
団信とは、団体信用生命保険のことで、ローンを契約した方が死亡したり、高度障害の状態になってしまったりした場合、残りのローンを支払ってくれる生命保険のことです。
多くの金融機関では、住宅ローンを組む際、団体生命保険にも加入することが必須条件となっています。
例えば、家族がいる場合、団信に加入していることで、万が一のことが合った場合でも、ローンがない状態で家を残してあげることができます。不動産投資であれば、そこに家賃収入も残してあげることができるのです。一昔前に比べて、団信の種類も多くなってきており、ガンや脳卒中、心筋梗塞などの病気になってしまった場合に保障するものもあります。
不動産投資は、いざという時に、家族の生活を支えるものとしても活用できます。これは、不動産投資が他の投資と違い、金融機関からローンを借りて投資をする性質ならではのものといえるでしょう。
最後に
今回は不動産投資の魅力についてお話しました。たとえどんなに資産があったとしても資産を取り崩すだけの生活は不安になるものです。将来の自分年金作りとして、また、将来の副収入として、不動産投資を選択肢の一つとして検討してみるのも良いでしょう。
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筆者紹介
高山 一恵(たかやま かずえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
株式会社Money&You 取締役
東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。
2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業。
10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。
また、『Money&You TV』や「マネラジ。」などでも情報を発信している。
全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。
明るく、親しみやすい講演には定評がある。
主な著書・監修
「マンガでわかる! iDeCoのはじめ方 ライバルはイデ子! ? 」(きんざい)
「やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)
「税金を減らしてお金持ちになるすごい!方法」(河出書房新社)
「人気FPが教える! 稼げるスマホ株投資」(スタンダーズ)
「人生100年時代! 月5000円から始める50代からのお金の増やし方」(宝島社)
「35歳までにはぜったい知っておきたい お金のきほん」(アスペクト)
「パートナーに左右されない自分軸足マネープラン」(日本法令)
「史上最強のFP3級テキスト」(ナツメ社) など
「ゼロから始めて2時間で一生困らないマネープランができる本」(彩図社)
「はじめてのNISA&iDeCo」(成美堂出版)
「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社)最新刊
原稿・取材・出演
日本経済新聞、聖教新聞、シティリビング、プレジデント、ダイヤモンド、AERA、東洋経済、日経マネー、日経WOMAN、日経ビジネス、日経ヴェリタス、日経DUAL、週刊ポスト、女性自身、女性セブン、VERY、Oggi、FRaU、CHANTO、LEE、More、with、美ST、おともだち、Allabout、東証マネ部!、MONEY PLUS、ビジネスジャーナル、マネー現代、OTONA SALONE、フジテレビ、TBS、TBSラジオ、日経CNBC、大手小町(読売新聞)、Suits-Woman、NHKニュースウォッチ9など
講演
日経新聞、朝日新聞、シティリビング、中央労働金庫、楽天証券、イオン銀行、紀陽銀行、電通アイソバー、朝日ネット、@type、パレット共済、明治安田生命、ライフネット生命、ソニー生命、マネーフォワード、共立女子大、Schoo(スクー)、FP養成機関、高島屋ファイナンシャル・パートナーズ、マネックス証券、電気連合組合、レンドリース・ジャパンなど