- 不動産投資
- 他の金融商品との比較
家賃は約70年で200倍に!?インフレに強い不動産投資と物件選び
2022年12月、日銀は日本のインフレが2023年初めから徐々に減速するとの見通しを示しました。
しかし、消費者物価指数(除く生鮮食品)を見てみると、2022年12月は前年比で4.0%上昇、2023年1月は前年比で4.3%上昇しており、今後、日銀が目標としている物価上昇率2.0%までは先が長いように感じます。
インフレ期では物が値上がりし、購入するためにはより多くの現金が必要となるため、「現金資産の相対的価値が目減りする」状態になってしまいます。
そこで、今回の記事では、さまざまな資産運用の中でもインフレに強いといわれている不動産投資について解説していきます。
(※)本記事は2023年1月時点の情報に基づいて作成しております。
景気変動の歴史
そもそもインフレとは、インフレーション(Inflation)の略で、日用品やサービスなどの値段(物価)が上がることをいいます。景気の拡大をともなうインフレを良いインフレといいます。
日本のインフレの歴史を見てみると、1986年頃は「バブル景気」と呼ばれ株価や地価が大きく上昇しましたが、物価自体はそれほど大きく上昇しませんでした。
1991年頃にバブルが崩壊しデフレ時代に突入しましたが、2002年頃には「いざなみ景気」が到来し過去最長の好景気時代で6年続きましたが、リーマンショックの影響で景気は後退しました。
2012年12月頃からは金融緩和政策が強化され、徐々に景気回復を見せ「アベノミクス景気」と呼ばれていました。
金融緩和により企業が資金調達しやすくなり、結果として資金が不動産に流入し地価も都心部を中心に大きく上昇した時期です。
この間は企業業績の向上から株価が上がり、また「インバウンド客の増加」や「東京で行われる国際的運動競技大会」に向かっての期待感などから不動産価格も上昇していきました。
低金利政策は菅・岸田政権でも受け継がれています。
【過去に発生した好景気の例】
- 1986~1991年頃 バブル景気
- 2002~2008年頃 いざなみ景気
- 2012~2018年頃 アベノミクス景気
※景気の良い時期は「○○景気」とマスコミが呼ぶことがあり、公的な正式名称ではありません。
近年の景気動向とインフレ
2022年3月頃から加速度的に始まった円安が11月頃からようやく円高傾向に変わりつつありますが、当時は円安とインフレのダブルインパクトで、現金資産の相対的価値が目減りした状態にあったといえます。
2023年1月現在も物価上昇が止まらず、インフレから脱却したとはいえない状況です。
ではなぜ、ここまで物価上昇が続いているのでしょうか。物価上昇の現状と理由について解説していきます。
①13ヵ月連続の物価上昇
連日、生活必需品を始めさまざまな商品の値上がりのニュースが流れています。スーパーなどに行くと商品の値段が上がってきている事を実感している方も多いのではないでしょうか。
2022年の消費者物価指数や生活意識に関するアンケートでも結果が出ているように、近年稀に見る上昇幅といえます。物価の具体的な上昇指数や今後の見通しについて解説していきます。
これまでの消費者物価指数と今後の物価の見通し
総務省の発表した消費者物価指数(生鮮食料を除く)を見ると、2020年平均を100とした場合、2023年1月は104.3、前年同月比で4.2%上昇という結果でした。
2022年1月から2023年1月までで過去13ヵ月連続の上昇を記録しました。さらに、この上昇率4.2%という数値は、日銀の物価上昇目標2%の2倍以上に達しています。
【消費者物価指数(生鮮食料品を除く)の推移(2022年)】 2020年=100
出典:2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)1月分https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf 2020年基準 消費者物価指数 全国2022年(令和4年)3月分及び2021年度(令和3年度)平均https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nendo/pdf/zen-nd.pdf#page=4
ところで、今後の物価について皆さんはどう考えているでしょうか。
2023年1月に発表された日銀の「2022年12月の生活意識に関するアンケート調査」で、1年後の物価が今と比べ何%程度変化するか具体的な数値をヒアリングしたところ、9.7%上昇と過去最高の数値となったそうです。
(※)前々回(2022年6月)は8.3%、前回(2022年9月)は8.5%とほぼ横ばい。
日銀は、2023年初めからインフレは減速すると見通していますが、今後も物価が上昇する可能性は捨てきれないのが現状です。
②新型コロナウィルス・ウクライナ情勢の影響もインフレ加速の要因
2020年1月に国内初の新型コロナウィルスが検出され、4月には緊急事態宣言が出されました。外出の自粛や飲食店の営業時間の制限、そして外国からの観光客入国規制などさまざまな制限により日本経済も大打撃を受けました。
新型コロナウィルス感染者の急増や行動制限などの影響により、世界的にサプライチェーン(調達、製造、販売、消費などの一連の流れ)が圧迫され、労働力不足にはじまり、物流、製造などに大打撃を与えました。
さらに、追い打ちをかけるように2022年にはウクライナ紛争が始まり、エネルギー価格の高騰、食糧やさまざまな原材料の価格上昇に拍車をかけることになり、一気にインフレが加速したと考えられます。
③高度経済成長期は良いインフレ、現在は悪いインフレ
良いインフレと悪いインフレを分かりやすく比較してみましょう。
1955年頃から1973年頃までの高度経済成長期は物価が大きく上昇しましたが、社会インフラの整備も併行して進み、製造業などが技術力を活かしたことなどにより経済成長を遂げ、給与水準も大きく向上していきました。
この期間、消費も拡大し、日本経済は大きく発展していきましたので、概ね「良いインフレ」といえるのはないでしょうか。
現在のインフレは、物価が大きく上昇し、企業の株価や地価なども上昇していますが、一部大手企業を除くと給与増の企業はそれほど多くないのが現状のようです。
つまり、それほど景気向上を実感できない中、物価だけが上昇している現状は「悪いインフレ」といえます。
④給与の大幅アップが期待できなければ、どう資産運用するかが鍵
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、この10年間で給与(月給)の伸びはわずか約3.5%(※1)にとどまっています。また大卒者の平均給与は前年比0.3%(※2)のマイナスとなっており、若い世帯の給与増加率の低さが分かります。
また、保険料など社会保障費の負担が大きくなる中で実質的な所得が減少してきている状態といえます。
【日本の一般労働者の給与推移(男女計)】
(※1)出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査の概況 一般労働者の賃金」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/dl/13.pdf
【大卒者の給与及び対前年増減率(2021年現在)】
(※2)出典:令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況 新規学卒者の性、学歴別賃金及び対前年増減率(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/dl/09.pdf
給与の大幅アップが期待できないようであれば、インフレ期のように物価が上昇している状況において、いかに上手く資産運用するが重要だといえるのではないでしょうか。
《インフレに強い不動産投資》3つのポイント
冒頭でも解説しましたが、こうした時期には物が値上がりし、購入するにはより多くの現金が必要です。
これは、インフレによって預けている現金資産が目減りしている状態ともいえます。
だからこそ、インフレに強い資産運用とされている「不動産投資」を選択肢の一つとして考えておくことをおすすめします。
下記では、インフレ期に不動産投資をおすすめする3つのポイントについて解説していきます。
①インフレ期は金融資産の価値が下がるため、現物資産の不動産に換えておくのがおすすめ
先述でも解説したように、インフレ期は物価があがることで物の値段があがり、現金の価値が下がります。
つまり、不動産や貴金属などの実物資産は、物価上昇により価格が上がることで価値も上がるため、インフレ期では相対的な価値が高くなることが一般的といえます。
そのため、現金を不動産に換えておけば、インフレ対策になります。また、入居者様さえ付いていれば、本業による収入の他に家賃収入が得られるので、インフレ対策と同時に年金対策にもなります。ここも不動産投資の魅力の一つです。
②土地の価格は長期的に見ると上昇していく
日本の経済を長期的に見ると、時間の経過とともに確実に物価が上がっています。
総務省の小売物価統計調査によると、喫茶店のコーヒー一杯の値段は1962年(昭和37年)に62.1円でしたが、2021年(令和3年)には513円と約8.2倍になっています。(※3)
地価の推移を見ても、東京都の平均地価は1962年から2021年にかけて住宅地で約7.3倍、商業地では約4.8倍に上昇しています。(※4)
そのため、人気がある地域に土地や不動産を持っていれば、金融資産よりも不動産の方がインフレに強い場合が多いかもしれません。そのうえ、入居者様さえ付いていれば継続的な家賃収入も得ることができます。
つまり不動産という現物資産を持ち続けていれば、土地の価格は長期的に見ると上昇する可能性があるとうことです。
ただし、建物は築年数の経過によりどうしても劣化してしまうため、徐々に価値が下がっていきます。そのため、点検・調査・修繕などで建物の管理をしっかり行うことが重要です。
【東京都区部の物の価格の推移】
(※3)出典:総務省統計局「小売物価統計調査(動向編)調査結果 主要品目の東京都区部小売価格:昭和25年(1950年)~平成22年(2010年)」https://www.stat.go.jp/data/kouri/doukou/3.htmlを加工して作成
総務省統計局「小売物価統計調査(動向編) 令和3年(2021年)」https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200571&tstat=000000680001&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1val=0を加工して作成
【東京都区部 地価平均価格の推移】
(※4)出典:国土交通省「地価公示価格(東京都分) 地価公示 区市町村別用途別 平均価格の推移」https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/kijunchi/chikakouji.htmlを加工して作成
③最大のポイントは家賃が上がりやすくなること
家賃は物価の変動などに合わせて上昇する傾向にあります。
総務省の小売物価統計調査によると民営借家の家賃(33㎡当たり、1カ月)は1950年(昭和25年)には422円でしたが2021年には87,950円になり、約70年間でなんと200倍以上も上昇しています。
【給与及び民営借家家賃表】
(※5)出典:総務省統計局「小売物価統計調査(動向編)調査結果 主要品目の東京都区部小売価格:昭和25年(1950年)~平成22年(2010年)」https://www.stat.go.jp/data/kouri/doukou/3.htmlを加工して作成
総務省統計局「小売物価統計調査(動向編) 令和3年(2021年)」https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200571&tstat=000000680001&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1val=0を加工して作成
(※6)出典:厚生労働省「昭和25年(1950年)労働経済の分析」https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/roudou/1950/dl/05.pdf
厚生労働省「令和3年(2021年)賃金構造基本統計調査の概況 一般労働者の賃金」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/dl/13.pdf
賃貸契約は2年など長期契約が多いので、現在のインフレがすぐに家賃に反映される訳ではなく、タイムラグがあるため後追いで上昇するケースもあります。
将来のために投資用マンションを購入し不動産投資をはじめるなら、毎月の家賃収入で不動産投資用ローンを返済し、返済完了後には家賃収入の全額を年金代わりとして受け取る事ができます。
家賃も物価の変動に合わせて上昇する場合がありますので、不動産投資はインフレに強い資産運用と言えます。
下記のような条件を満たす物件を選ぶことが重要です。
不動産投資をはじめるなら① 空室リスクの低い物件を選ぶ
インフレ期に限ったことではありませんが、空室リスクを抑えることが不動産投資の最重要課題といっても過言ではありません。下記のような条件を満たす物件を選ぶことが重要です。
- 立地
・都心までの交通アクセスの優れた立地で、単身者の賃貸需要が見込まれるエリア
・周辺や沿線に再開発などの予定があり将来性が見込める立地で、生活利便性の高いエリア
- 構造
・新耐震基準を満たした、長期的に資産価値を保全できる構造
・鉄筋コンクリート造などの耐火性・耐震性の高い物件
・国土交通大臣の登録を受けた第三者機関が評価し交付される「住宅性能評価書」を取得している物件
- 設備仕様
・宅配ボックスやWi-Fiなど先進的な設備のある物件
・24時間監視システムやオートロックなどを導入しているセキュリティの高い物件
- 管理
・建物管理:建物の劣化を未然に防ぎ、資産価値を維持・向上のための管理体制が整っている
・賃貸管理:入居者様の募集・家賃の集金・クレーム対応などで、オーナー様の手間がかからない管理体制が整っている
不動産投資をはじめるなら② 家賃が高水準のエリアを狙う
2018年の都道府県別に家賃を比較してみると、東京都の家賃は81,001円と最も高く、それに次ぐ神奈川県は68,100円で家賃の高さが分かります。こうしたエリアは不動産投資を行うエリアとして特に適しているといえます。
【都道府県別 1か月当たり家賃・間代(2018年現在)】
(※)出典:総務省統計局「平成30年(2018年)住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/kihon_gaiyou.pdfを加工して作成
まとめ
新型コロナウィルスやウクライナ情勢、インフレなど、日本を取り巻くさまざまな情勢が目まぐるしく変化する中で資産を作るために重要なのは、「インフレに強く比較的安定した資産運用」を行うことだと考えます。
その点、現物資産である不動産投資は、株のような金融商品よりも比較的ローリスクでインフレ期においては資産価値がさがりにくく、長期的に見れば価格が上がる可能性があります。
また、入居者様さえ付いていれば安定的な家賃収入を得られるミドルリターンな資産運用のひとつです。そのうえ不動産価格が高騰したときには、購入時よりも高価格で売却を期待できるのも魅力の一つです。
不動産投資がインフレに強い3つのポイントと不動産投資をはじめるときのポイントを抑えておけば、より安心して資産づくりができるのではないでしょうか。
《インフレに強い不動産投資》3つのポイント
①インフレ期は金融資産の価値が下がるため現物資産の不動産に換えておくのがおすすめ
②土地の価格は長期的に見ると上昇していく
③最大のポイントは家賃が上がりやすくなること
不動産投資をはじめるなら① 空室リスクの低い物件を選ぶ
不動産投資をはじめるなら② 家賃が高水準のエリアを狙う
不動産投資の中でもワンルームマンション経営なら、不動産投資用ローンを活用して少ない自己資金でも始められます。マンション一棟経営やアパート経営と比べても、ワンルームマンション経営なら1部屋単位で購入できるため、費用も安く抑えられます。
最後になりますが、近年のさまざまな経済変動があったことで今後はなだらかな経済成長、なだらかなインフレ、なだらかな資産運用という、この「なだらか」という状況が常態化していくことが世間的に望まれるのではないかと筆者は考えます。
マンション経営をはじめとする不動産投資は、基本的に20年程位の長期で運用する投資です。インフレに比較的強いため「なだらかな資産運用」ができ、老後の資金づくりに適しているといえるのではないでしょうか。
著者紹介
野中 清志(のなか きよし)
株式会社オフィス野中 代表取締役 住宅コンサルタント
マンションデベロッパーを経て、2003年に株式会社オフィス野中を設立。
首都圏・関西および全国でマンション購入に関する講演多数。内容は居住用から資産運用向けセミナーなど、年間100本近く講演。
最近の主な著書・連載等
「売れる」「貸せる」マンション購入法 週刊住宅新聞社
「ワンルームマンション投資法」週刊住宅新聞社
「お金」見直し応援隊 日経BPセーフティジャパン(Web) 他多数
テレビ出演等
TOKYO MX TV他「ビジネス最前線 不動産による資産活用の今 」(2016年3月)
BS12〔TwellV(トゥウェルビ)〕「マンション投資 成功へのセオリー」(2014年12月)
「海外投資家も注目する東京の不動産」(2013年11月)
他ACT ON TV 等多数