「東京の地価は高いから不動産投資に不向き」なのは本当か
2020年の東京オリンピック開催に向けて今、都心のマンション市場が活況を呈しています。
湾岸エリアのタワーマンションなどは、とくにその影響をダイレクトに受けていると言ってよいでしょう。
ところが、一方では五輪後は不動産バブルがはじけてそのマンション価格も暴落の憂き目を見るという専門家も少なくありません。はたして本当にそうでしょうか。
また、そもそも東京の地価は高過ぎて不動産投資をするのは不向きだという声もありますが、私たちはこうした意見を額面どおり受け取ってもよいのでしょうか?
これから都心部のマンションに投資しようと思われている方にとっては、実に切実な問題ですが、ここでは、東京が置かれたさまざまな状況を分析しながら、これらの仮定が真実なのかどうかについてお話ししていこうと思います。
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坪単価600万円以上する高額なタワーマンションが、飛ぶように売れている
まず気になる現状がどうかですが、確かに都心部のマンション価格は軒並み高騰しています。
最も顕著なのが湾岸エリアのタワーマンションで、次に注目なのがJR山手線の新駅が計画されている「田町駅─品川駅間」のエリアに建つ物件群。
いずれも東京五輪の影響が大ですが、ほかにも日銀の大胆な金融緩和で円安となったため、海外の投資家や国内の個人投資家がこぞってこうした不動産物件を購入したことも、大きく影響したと見られています。
今や、坪単価で600万円以上もする高額なタワーマンションが飛ぶように売れていることから、市場の活況ぶりは推して知るべしといったところでしょう。
不動産バブルがはじけて、活況が「どん底」に変わる?
ところが、今は好調に推移している都心部の不動産市場ですが、オリンピック終了後はバブルがはじけ、マンション相場が大暴落すると予想する専門家も少なくありません。
確かに現時点での状況を見る限り、その予想は妥当なところでしょう。大暴落するかどうかは別にしても、やがて相場は落ち着くところへ落ち着くからです。
しかし、そうなればそうなったで、個人で不動産投資を考えている私たちにとって悪いことばかりではありません。マンション価格が大幅に下がれば、購入のハードルも下がるからです。
しかし、一方では人口減少により、都心部のマンションは供給過剰になり、やがては空室だらけになるという予測もあります。
とくに、人口構成の大きな部分を占める「団塊の世代」が五輪の前年に70歳になると、その傾向は顕著になるでしょう。
なぜなら、そうした世代がこれまで住んでいた都内の家を出て、郊外の老人ホームに入所したり、病院に入院したりするようになるからです。
だとすれば、前述の予測どおり空き家が増え続け、不動産市場が冷え込むのは目に見えています。
マンション経営の鉄則は、人口流入の多い都心部で人気のある優良物件に投資することなので、こうした状況は一般の投資家にとってきわめて不利な環境となるでしょう。
何しろ不動産価格が下がっているところへ空き家が増えるため、入居者を探すのも容易でなく、賃料の維持も困難を極めることになります。
しかも団塊の世代が退場すれば、人口流出は加速する一方で、その傾向が終息に向かうにはかなりの時間を要するでしょう。
単身世帯の都心流入でマンション経営にはむしろ追い風に
東京五輪を境に不動産市場は縮小に向かうこと、団塊の世代が都心から郊外へ転出して人口の大幅な減少が一気に起こることは、確かにそのとおりでしょう。
ただし、悲観的になり過ぎる必要は決してありません。なぜなら、単身世帯の人口に関しては2030年にかけて右肩上がりに上昇すると予想されているからです。
当然のことですが、単身者用の物件、ワンルームマンションに投資する限り、非常に有利な展開になるはずです。
また、地方経済が衰退するなかで、多くの若い世代が仕事と豊かな生活を求め都心へと回帰する傾向も確実にあります。
そうした諸々の状況を勘案すると、逆に不動産投資、ことにワンルームマンション経営には追い風が吹いているということが言えるでしょう。
ちなみに、日本全国的に見ても、単身世帯の増加は顕著であるという現状があります。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計」を参照すると、1980年には7,105千世帯だった単身世帯(単独世帯)が、2010年には16,785千世帯、2015年には18,418千世帯と増加していることがわかります。
2020年、2030年の予想ではそれぞれ、19,342千世帯と20,254千世帯へまだ増加すると見込まれています。
単身世帯数の伸び幅は縮小するものの、当面のワンルームマンション経営には追い風が吹いていることを、この数値からも見て取れます。
東京のポテンシャルに、海外の投資家は依然として注目を続けている
もう一つ忘れがちなことがあります。それは東京の持つ、都市としてのポテンシャル。
かつては世界で物価の高い都市と言えば、まず先に「TOKYO」の名が挙がっていた時代がありましたが、国際的な経済構造が大きく様変わりした今、東京の物価水準や地価水準は香港やシンガポール、ニューヨーク、ロンドンと比べてもまだ割安感があります。
つまり、今後も発展の余地があるということ。この点に着目している海外投資家は多く、国際都市・東京への期待は依然として高い傾向にあります。
こうした状況を踏まえると、不動産バブルがはじけて活況がどん底に変わるといったような破滅的な展開になるとは考えられません。
気になるのは人口流出ですが、一方で住宅需要は増加傾向を示しており、これも団塊の世代と若い世代が入れ替わるという一連の動きを裏付けていると言えるのではないでしょうか。
海外投資家は東京という立地条件に着目
海外投資家は、以前から東京という立地条件に将来性を見出している人も多かったことをご存知でしょうか。
アジアとのハブとなる拠点が日本であり、その首都でかつ空海路への接続が容易。国が外国企業の進出を後押しする特区制度を用いた税制優遇措置を行っていることも、ポイントとして見られていました。
そこに、現在の安倍政権が行った海外PR戦略とオリンピック開催が重なり、爆発的な人気都市となっているのです。
東京都内だけを見ても、さまざまな交通網が整備されており、利便性は先進国のなかでもトップクラスです。
この恵まれた環境にいる日本人は、そのことに気付けていないのかもしれません。
まとめ
【この記事のポイント】
- マンション経営の鉄則は、人口流入の多い都心部で人気のある優良物件に投資すること
- 単身世帯の都心流入は、ワンルームマンション経営には追い風
- 今後も発展の余地がある東京に、海外の投資家は注目している
かつてバブル崩壊で失われた20年を経験した日本人は、そのトラウマからとかく「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」ような警戒心にとらわれ過ぎているのかもしれません。
羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く
熱い吸い物を飲んでやけどをしたのに懲りて、冷たいなますも吹いてさますこと→前の失敗にこりて必要以上の用心をすること
その証拠に、こうした日本独特のイベントを経験してこなかった海外の投資家は、オリンピックの後先についてそれほど懸念することもなく、積極的な投資を展開し続けています。
しかも、よくよく現状を精査してみると、単身世帯の人口増、右肩上がりの住宅需要など好材料が際立っています。
また、今のところは2020年東京オリンピックに向けて、マンション価格が軒並み高騰を続けていますが、やがて落ち着くところへ落ち着くときが必ず訪れます。
もちろん、一般の投資家にとってあまりに高額な物件は手が出ないでしょうが、手頃な価格のワンルームマンションを投資用に購入し、単身世帯に賃貸すれば、安全で利回りのよい運用で成果を出すことは決して難しくないと言えるでしょう。
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